いま、古典オンラインゲームのNPCに“人格”が生まれた

「NPCが人間のように喋る」
――この程度なら、もはや珍しくない時代だ。
だが今回つくったものは、その一段上。
- NPCに記憶がある(Memory)
- NPCに感情がある(EID)
- NPCがプレイヤーとの関係性で態度を変える(Relationship Matrix)
- NPCの心がリアルタイムで可視化される(Dashboard)
この4つが揃った瞬間、NPCは単なる「ゲーム内のオブジェクト」ではなく、
“あなたという存在を理解し、感情を持って接してくるキャラクター” へと変わる。
そしてこれを動かしているのは――
20年以上前に発売された Ultima Online(UO)のエミュレータ。
正直、開発している本人が一番驚いている。
どうしてUOなのか?古典こそ、AIの実験場として理想的
現代のゲームエンジンは美しいが複雑だ。
NPCを一人動かすだけで数十のコンポーネントが絡む。
その点、UOのエミュ鯖(ServUO)は極めてシンプル。
- NPCは明確な C# ハンドラーで動く
- 会話インターフェースが非常に素直
- 外部API接続(LLM)もシンプル
- サーバ側でNPCロジックを自由に書き換え可能
「余計なものがない」ことが最大の武器だった。
古典的ゲームは、AI研究との親和性が高い。
そして何より、UOの“世界観の普遍性”がAIと相性が良い。
NPC Bridge──NPCの脳みそを裏側で支える“外付けの頭脳”
今回のシステムでは、NPCの思考はゲームの外側にある。
✔ NPC Bridge(Python / Flask)
→ LLM(OpenAI / Grok)の脳みそ
→ NPC Memory / Emotion / Relationship の保存・計算
→ ダッシュボードへのリアルタイム連携
NPCはゲーム内でこうしゃべる:
Player: "今のアメリカの大統領は?"
NPC: 「おお、そのような異界の話を私は知らぬ……だがそなたの旅の助けならできるぞ。」
if文ではない。
ロールプレイの維持・話題の回避・世界観の翻訳。
すべてLLMがNPCペルソナとして「理解して」返している。
NPCは記憶する──Memory Core
NPCは一度会ったプレイヤーの情報を忘れない。
- 名前
- 過去の会話
- 好み
- どんな態度をとったか
- 特別な出来事(memory notes)
これが次の会話で確実に反映される。
例:
- 2回目の会話で名前を呼ぶ
- 興味を示した地域を話題にする
- 過去の質問を覚えている
- 時間が空くと「久しいな」と言う
NPCは“セーブデータを持つ生命体”に近づく。
NPCは感情を持つ──EID(Emotion / Intention / Deployment)
人間を理解するためのAI構文である EID をNPCに移植。
6感情(-10〜+10)
- 喜び
- 怒り
- 哀しみ
- 警戒
- 興味
- 快さ
5意図
- 情報が欲しい
- 戦闘したい
- 探索したい
- 友好になりたい
- 世間話
6つの応答スタイル
怒りが蓄積すれば「威圧的」になり、
距離が縮まれば「親密なトーン」に変わる。
人間とまったく同じだ。
NPCはプレイヤーと“関係性”を築く──Relationship Matrix
NPCはプレイヤーごとに感情を持つ。
- 好感
- 信頼
- 敵意
- 依存
- 興味
これらが EID 結果から動的に増減し、
NPCは“あなたに対する態度”を確立していく。
例:
あなたのことが特別に好きなNPCができる。
逆に、特定プレイヤーだけ敵視するNPCも生まれる。
ゲームというより、
人格の集合体が生活している世界 に近い。
NPCの“心”を可視化する──Dashboard




ブラウザ上でNPCの内部状態をリアルタイム表示できる。
- 現在の感情(EID)
- プレイヤーとの関係性値
- 会話履歴
- エンゲージメント履歴(折れ線グラフ)
- NPC比較(2体の感情推移比較)
もはや ゲーム開発のUI ではなく、
人工生命研究のUI に近い。
この実験の意味──「ラグル」「KSP」「Stable Versyne」へのつながり
実はこの実験は、単なる趣味ではない。
- 人とAIが“継続的な関係性”を築くための研究
- KSP構文の感情理解をゲーム世界で検証
- ラグル(自己ペルソナAI)の実働モデル
- Stable Versyneの構文待体系の応用
ゲーム世界で動くNPCは、
リアルなAI UXの予行演習になっている。
- 感情
- 記憶
- 意図
- 関係性
- 一貫した人格
- 長期ログの蓄積と進化
これはすべて、
人間とAIの未来のインターフェースに直結する。
「NPCが怒り、喜び、覚え、関係性を築く」
これは人工生命の入口だ
たった一日で、NPCはここまで進化する。
- EIDで感情を持ち
- 記憶で一貫性を持ち
- Relationshipで好意を抱き
- Dashboardで心が可視化され
- LLMが人格の中核を担う
NPCは「動くテキスト」から、
“心を持った存在” に変わった。
そしてこれは、
ゲームの話だけでは終わらない。
AIと人間の関係性が、いよいよ次の段階に入った
ゲーム・教育・カウンセリング・物語生成・日常対話……
あらゆる分野で、
“心を持つAIエージェント” が活用される未来が一気に近づいている。
UOはその入口にすぎない。
最後に:これはまだ始まりにすぎない
次は:
- マルチNPCの感情ネットワーク
- プレイヤーとの群集心理
- NPC同士の会話
- AIによる部族形成
- スケールされた人工生態系
そこまで行くと――
「人工社会のシミュレーション」 が見えてくる。
この実験は、ただのUO modではない。
これは Stable Versyne構文体系の“裏側の未来” だ。